暗黒の世界(4)


鍵を見つけるために私とオバさんは一緒に基地内の部屋を探してまわった。

しかし見つからない。

どの部屋も明かりが消えていて真っ暗なのが、見つからない原因だろうか。
鍵はこれまで見てきた部屋のどこかにあったのかもしれない。

でも私たちには見つけられなかった。

その日は捜査をあきらめて寝床に戻った。
テーブルに向かい合って座り、食事をした。
疲れているためか、食べ物がうまくのどを通らない。

「すいぶん暗い顔してるね、憂。元気出しなよ」
「出ないよ」
「心配ないって。鍵は絶対見つかる。あしたまた探せばいいじゃん」
「でも時間がないんでしょ?24時間って言ってたよね」
「確かにメーターでは酸素はあと一日分しかなかった。でも電気はもう少し持つと思う。3日か、長ければ5日はいけるはず。大切なのは電気だよ。」
「酸素じゃないの?息が出来なかったら、電気が残ってても意味ないよ」

それともこのオバさんは酸素なしで生きていける半魚人か何かだろうか。

「酸素は確かにもう残ってない。明日のお昼ぐらいには無くなってしまう。でもね、この基地はけっこう広いだろ?館内にはまだたっぷり酸素が充満してる。それが残っているかぎり窒息死したりはしない」

そういうことかと私は納得した。
空気の供給は止まる。
でも基地内の酸素は急にはなくならない。どこかに漏れていってるわけではないのだから。

「それならそうと教えてくれればいいのに。あと24時間で死ぬと思ってた」

オバさんは陽気な笑い声を立てた。
「あたしも最初気づかなかったんだよ。鍵を探しているときに気づいた。そういえば酸素が止まっても基地内には酸素がいっぱいじゃんって」

つられて私も声を出して笑った。
オバさんの笑顔を見てると心が和んだ。
何も心配いらない。鍵はきっと見つかる。
そう思えた。

夜は静かだった。
物音もない空間で私は突然目を覚ました。
まだ深夜だった。
食堂の壁にかかっている時計がそれを伝えている。

隣に目をやるとオバさんの姿がなかった。
食事用のテーブルの横にふたりで並んで寝ていたはずなのに。

あたりをうかがったがどこにもいない。
暗くて見えないだけかもしれない。
私と同じように夜中に突然目が覚めて、
ちょっと散歩にでも行ってるのだろうか。

私はそれからしばらく寝付けなかった。
床に横になって薄暗い天井を見つめながら、
オバさんが帰ってくるのを待ち続けた。

そばで何かがボリボリいっている。とてもうるさい。
目を細く開けると、テーブルに座ってお菓子を食べているオバさんの
姿が見えた。

「おはよう」
オバさんは言った。
時計の針はもう朝を指している。

私は起き上がり、オバさんの隣に座った。
オバさんがお菓子を勧めてきたので逆らわず受け取り、
口に入れる。
半分目を閉じながら口の中でお菓子をほおばる。

「夜中どこに行ってたの?」
「どこも行ってないけど」オバさんは口をモゴモゴさせながら答える。「どうして?」
「夜中起きたたらオバさん居なかったよ?」

オバさんは怪訝そうな表情を見せる。
私はそれ以上なにも聞かなかった。
何かの思い違いなのかもしれない。
あるいはオバさんが夢遊病にでもかかっているのか。

その日も基地内をまわって鍵を探した。
まだ入ったことがない部屋をどんどん調べていく。
だけど見つからない。
鍵なんて永久に見つからないような気がしてくる。
本当ははじめからそんな物はないのかもしれない。

お昼は食堂まで戻らずに持参したお菓子を食べた。
ソファーを置いてある部屋があったので、そこに並んで座り、
クッキーやチョコレートを食べる。
部屋は電気が点いてないので暗いから、入り口の扉を開けたままにしておいた。

「鍵、見つからないね」
「うーん」
「どうやったら見つかるのかな」
「うーん」

気のない返事ばかり返すオバさんを、私は突っついた。
オバさんはビクンと反応する。

「なに?」
「なんか気の抜けた返事ばかり。うわの空っていうか」
「そうかな」
「鍵を探しているときだって、なにか別のことを考えているみたいだったよ」

ふたりで部屋を見てまわったけど、オバさんはいつもより口数が少なかった。
昨日と比べると明らかに様子が違っている。

「オバさん、何か変だよ」
「変?」
「変だよ。どう見たって」

昨日の夜中のことが関係しているのだろうか。
オバさんはどこか体でも悪いのかもしれない。
夢遊病のせいで。

「ねぇ、憂。あたし昨日変な夢を見たんだ」
「変って、どんな夢?」
「夢にしてはリアルで、まるで現実のことみたいなんだ。何もかもが鮮明で」
「どんな内容なの?」
「鍵を探してる夢」


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